概要
- RF/EMIシールド用スパイラルガスケットは、スプリングテンパー処理を施したベリリウム銅またはステンレス鋼リボンをスパイラル状に成形した構造で、接合部(Seam)において低い伝達インピーダンス(Transfer Impedance, ZT)を確保し、優れたシールド性能を実現する材料です。
- エンクロージャのドア、カバー、パネルなどの開閉接合部は電磁波漏洩の主要経路となります。スパイラル構造はスプリングメモリーと圧縮永久ひずみ耐性に優れ、繰返し開閉・圧縮条件下でも接合部全長にわたり均一な接触圧力と低い接触抵抗を維持します。
- 半導体プラズマエッチング装置などRF電力(13.56 MHz、27.12 MHz等)を使用する装置では、チャンバーおよびエンクロージャ接合部からのRF漏洩がプロセス安定性と周辺機器のEMIに直接影響するため、低いZT値を有するスパイラルガスケットが不可欠です。
- 通信機器、軍用・衛星機器など、高周波帯域で高いシールド性能が要求される精密機器にも幅広く適用されます。
主な特長
- 高シールド性能:SAE ARP1705に基づき100 dB以上のシールド性能(377 Ωの波動インピーダンスに対して低い接合部インピーダンスを確保)
- 均一な接触圧力:グルーブマウント構造により接合部全長に連続導電経路を形成し、追加の固定具なしで組立可能
- 反力チューニング:ストリップ厚さとピッチの調整によりStandard/Moderate/Low Forceの3段階を提供(圧縮力は厚さの3乗に比例、推奨圧縮率は外径比約25%)
- 材質選択:ベリリウム銅(高弾性)またはステンレス鋼(耐食性・経済性)、RoHS適合。O-Ring加工時も精密溶接により導電連続性を維持
製品詳細
形状

- 材質(Material):ステンレス鋼、錫めっきベリリウム銅、ニッケルめっきベリリウム銅から選択可能です。
- 外径(OD):0.1 mm単位で製作可能です。(下記型番の数字がガスケット外径を示します。)
例) 010 = 1.0mm, 023 = 2.3mm, 099 = 9.9mm
製品タイプ
ストリップ材質、反力、直径など、以下のオプションを組み合わせて選択できます。
| ストリップ材質 |
弾性(反力) |
直径 |
芯材 |
形状 |
Tin-plated BeCu Nickel-plated BeCu SST(Stainless Steel) Tin-plated SST Nickel-plated SST * All materials are RoHS compliant. |
Standard (S) Moderate (P) Low (F) |
1.0mm to 10.0mm (0.1 mm単位で製作) |
No Cord (W) Silicone Solid (A) Silicone Tube (T) Silicone Foam (F) |
String O-Ring |
* 上表は基本的な組合せ条件です。O-Ring寸法や弾性区分ごとの直径など、製造上の制約が生じる場合があります。
* 芯材タイプ
W: 芯材なし
A: ソリッドシリコーン
T: シリコーンチューブ
F: シリコーンフォーム
* 芯材仕様
| 項目 |
シリコーンゴム(A、T) |
シリコーンフォーム(F) |
試験方法 |
| 色 |
半透明 |
白色 |
- |
| 密度 |
1.16 g/cm³ |
1.16 g/cm³ |
JIS K 6220 |
| 硬度(JIS A) |
61 |
53 |
JIS K 6253 |
| 引張強さ |
104 Kgf/㎠ |
91 Kgf/㎠ |
JIS K 6251 |
| 伸び |
365 % |
320 % |
JIS K 6251 |
型番例
| 型番 |
製品オプションの組合せ |
| 弾性 |
ストリップ材 |
ガスケット外径(OD) |
芯材(Cord) |
| SBT-035W |
S: Standard |
BT: Tin-plated BeCu |
035: 3.5 mm |
W:芯材なし |
| PBN-048A |
P: Moderate |
BN: Nickel-plated BeCu |
048: 4.8 mm |
A:ソリッドシリコーン |
| FSN-053T |
F: Low |
SN: Stainless Steel |
053: 5.3 mm |
T:シリコーンチューブ |
* 25%圧縮時の製品別反力
- S: Standard(標準反力) ~13 kgf/in
- P: Moderate(中反力) ~5 kgf/in
- F: Low(低反力) ~2 kgf/in
グルーブ取付け
| スパイラル外径[mm] |
推奨グルーブ寸法[mm] |
| Depth |
WB |
WT |
| 1.0 |
0.75 |
1.35 |
0.96 |
| 2.0 |
1.50 |
2.70 |
1.92 |
| 2.2 |
1.65 |
2.97 |
2.11 |
| 2.4 |
1.80 |
3.24 |
2.30 |
| 2.6 |
1.95 |
3.51 |
2.50 |
| 2.8 |
2.10 |
3.78 |
2.69 |
| 3.0 |
2.25 |
4.05 |
2.88 |
| 3.2 |
2.40 |
4.32 |
3.07 |
| 3.4 |
2.55 |
4.59 |
3.26 |
| 3.6 |
2.70 |
4.86 |
3.46 |
| 3.8 |
2.85 |
5.13 |
3.65 |
| スパイラル外径[mm] |
推奨グルーブ寸法[mm] |
| Depth |
WB |
WT |
| 4.0 |
3.00 |
5.40 |
3.84 |
| 4.2 |
3.15 |
5.67 |
4.03 |
| 4.4 |
3.30 |
5.94 |
4.22 |
| 4.6 |
3.45 |
6.21 |
4.42 |
| 4.8 |
3.60 |
6.48 |
4.61 |
| 5.0 |
3.75 |
6.75 |
4.80 |
| 6.0 |
4.50 |
8.10 |
5.76 |
| 7.0 |
5.25 |
9.45 |
6.72 |
| 8.0 |
6.00 |
10.80 |
7.68 |
| 9.0 |
6.75 |
12.15 |
8.64 |
| 10.0 |
7.50 |
13.50 |
9.60 |
シールド性能
SAE ARP 1705C(EMIガスケット材料のRFシールド特性を測定する同軸試験手順)に基づくShielding Qualityの測定原理と算出方法を以下に要約します。
Shielding Qualityの測定原理
- 電磁波がEMIガスケット接合部に到達すると、表面電流密度が発生します。
- この電流が接合部を通過する際、インピーダンスにより電圧(V)が発生し、その電圧が外部への電磁界漏洩を生じさせます。
- ガスケットは接合部インピーダンスを最小化し、漏洩を抑制します。
- したがって、ガスケットのシールド性能は「電圧/表面電流密度」で定義される伝達インピーダンス(ZT)に反比例します。

ZT = V/JS
ZT = Transfer impedance of seam (Ω-m)
V = Transfer voltage (voltage across seam)
JS = Density of current which crosses the seam (A/m)
Shielding Qualityの算出式
Shielding Quality(SQ)は、自由空間の波動インピーダンス(377 Ω)を基準としてガスケットの伝達インピーダンスと比較して算出されます。
- 定義:

- 対数スケール(dB)表示:
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材質別Shielding Qualityグラフ
-
Stainless Steel [P/N: SSN-024W]
-
Tin-plated BeCu [P/N: SBT-024W]
![Tin-plated BeCu [P/N: SBT-024W] Shielding Qualityグラフ](/images/product/m04_03/SQ-SBT-024W.png)
-
Nickel-plated BeCu [P/N: SBN-024W]
-
* Shielding Quality(SQ)は、試料ガスケットの材質、表面処理、圧縮率、および測定治具の接触面(Joint Surface)の材質、表面状態、導電性などの試験条件によって異なる場合があります。
適用例
半導体製造装置、ディスプレイ製造装置、通信機器など、電磁波に敏感な精密機器に主に使用されます。
製品サポート
型番選定方法
* ストリップ材質、弾性、芯材タイプ、O-Ringタイプなどを選択可能
| オプション |
コード |
| 弾性 |
S: Standard, P: Moderate, F: Low |
| ストリップ材質 |
BT: Tin-plated BeCu, BN: Nickel-plated BeCu, SN: SST (Stainless Steel), TI: Tin-plated SST, NI: Nickel-plated SST |
| ガスケット外径(Ø) |
010~100 (1.0~10.0mm) |
| 芯材 |
W: No cord, A: Silicone rubber solid, T: Silicone rubber tube, F: Silicone foam |
| O-Ringタイプ* |
xx phi: O-Ring内径(mm)、*別途表示がない場合はStringタイプ |
* O-Ringタイプ:接合部をスポット溶接し、優れた溶接精度と耐久性を確保
(ガスケット外径(OD)および芯材タイプにより、O-Ring内径(ID)が制限される場合があります)
型番例
| 型番例 |
型番説明 |
| SBT-025W |
標準反力、錫めっきBeCu+Ø2.5 mm、芯材なし |
| FSN-040W-50phi |
低反力、ステンレス鋼+Ø4.0 mm+O-Ring内径50 mm、芯材なし |
銅(Cu)汚染防止管理体制
当社は、半導体プロセスにおける微細回路欠陥の原因となる銅(Cu)汚染を防止するため、製造ラインおよび物流プロセス全体に厳格なPhysical Isolation(物理的隔離)プロトコルを適用しています。
- 物理的隔離工程(Physical Isolation):銅汚染源を遮断するため、消耗品製造エリア、原材料倉庫、完成品保管区域を相互に独立した空間として分離・運用します。
- 交差汚染防止システム:原材料受入れから最終出荷までの物流動線を一方向(One-way)に設計し、工程間の残留銅粒子による交差汚染を防止します。
- 厳格な動線管理(Traffic Control):作業者および搬送設備の動線を汚染リスクに応じて分離し、人的要因による銅粒子混入の可能性を最小化します。
- 高純度品質管理:先端微細半導体プロセスの要求に適合する厳格な洗浄・検査プロトコルにより、部品信頼性を向上させます。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. PECVDやEtcherなどの半導体装置でRF Shield Spiral Gasketを使用する理由は何ですか?
▶
A.
- チャンバー内でプラズマを生成するために印加される高周波(RF)エネルギーの外部漏洩を抑制し、部品間の連続的な電気的ボンディング(Continuous Bonding)を確保するためです。
- PECVDやEtcherなどの半導体装置では、プロセスガスをプラズマ化して制御するため高出力RF電源を使用します。金属構造体の接触部に微小ギャップや不安定な接触があると、その部分のインピーダンスが増大し、プラズマ励起用RFエネルギーが不安定な接触面から装置外部へ放射されるアンテナ効果が生じます。代表例として、Chamber LidとChamber Bodyの不完全な接触面が、電圧が周期的に変動するダイポールアンテナのように動作する現象があります。
- ESONG EMCのRF Shield Spiral Gasketは、優れた導電性と弾性回復力により構造体へ密着し、接触インピーダンスを最小化します。これによりアンテナ効果の発生要因を抑制します。また、SAE ARP1705に基づく100 dBのShielding Quality測定結果が客観的性能を示します。
お問い合わせ: ask@esongemc.com / +82-2-2082-5420
Q2. 半導体装置内の過酷なプラズマ化学環境(HF、CF4, Cl2など)および高バイアス条件におけるガスケット腐食対策として、どのような材料工学的提案がありますか?
▶
A.
- プラズマプロセスチャンバー内部および排気ラインは、フッ酸(HF)、四フッ化炭素(CF4)、塩素ガス(Cl2)などの強腐食性ハロゲン系反応性ガスに常時曝されます。一般的な錫(Sn)めっきベリリウム銅スパイラルガスケットをそのまま使用すると、ガス分解生成物と金属が反応して塩化物またはフッ化物の絶縁性皮膜を形成し、接触抵抗の急増とRFシールド性能低下に直結します。
- この問題を防止するため、ESONG EMCはハロゲン環境に最適化した特殊耐食ガスケットを提供しています。ハロゲンラジカルに対して非揮発性の不動態皮膜を形成するニッケル(Ni)めっき製品、高耐食性のHastelloy C-276およびInconel、さらに腐食環境でも優れた機械特性を維持するCo-Cr合金(Elgiloy R30003)製品を展開しています。
- 特にHastelloyは多量のモリブデン(Mo)とクロム(Cr)を含有し、ハロゲンガス環境における局部的な孔食(Pitting)およびすきま腐食(Crevice Corrosion)に対して極めて高い耐性を示します。
- 詳細は、耐食・耐化学性スパイラルガスケット(Link)ページをご参照ください。
お問い合わせ: ask@esongemc.com / +82-2-2082-5420
Q3. RF Shield Spiral Gasketを取り付けるための機構設計ガイドラインは何ですか?
▶
A.
- RF Shield Spiral GasketのRFシールド性能と機械的耐久性を確保するため、以下の設計ガイドラインを推奨します。
- グルーブ深さ設計(最適圧縮率15~25%)
取付けグルーブ深さは、ガスケット自由外径(String OD)に対して15~25%程度(最大30%未満)の圧縮となるよう設計してください。金属グルーブがハードストッパーとして圧縮量を規制するため、塑性変形を抑え、十分な弾性回復が得られます。
- グルーブ幅(Width)の確保
RF Shield Spiral Gasketは垂直圧縮時に断面が円形から楕円形へ変形し、側方へ膨張します。グルーブ壁への噛み込みや損傷を防ぐため、十分な横方向クリアランスを確保してください。外径ごとの具体的な幅・深さは当社ウェブサイトの設計寸法表をご参照ください。
- 荷重条件に応じた反力チューニング
ガスケット反力が機構部品の締結荷重を上回ると、所定のグルーブ深さまで圧縮されず、ギャップが生じてRFシールド性能が低下する場合があります。ESONG EMCはストリップ厚さとピッチを精密に調整し、機構部品の荷重条件に適合する圧縮反力を提供します。
- 芯材(Cord)オプションの適用
組立時の不均一荷重や瞬間的衝撃による過圧縮を防ぐため、ソリッドシリコーンまたはシリコーンチューブを内蔵した芯材(Cord)オプションを推奨します。芯材が不規則な圧縮応力を吸収・分散し、金属リボンの永久変形を抑制します。
- 長期信頼性
ESONG EMC製品は、70℃・100時間の長期圧縮条件(Compression Set Test)後も90%以上の高い復元率を維持するよう厳格に品質管理されています。
お問い合わせ: ask@esongemc.com / +82-2-2082-5420
Q4. O-Ringタイプの利点は何ですか?
▶
A.
- O-RingタイプのRF Shield Spiral Gasketは、顧客の機構仕様に合わせた精密カスタム製造により、一般的なStringタイプでは得られない高い機械的・電磁的信頼性を提供します。
- 均一なピッチによるシールド信頼性の最大化
ロール状ガスケットを現場で切断・取付けすると、張力によりガスケットが伸び、ピッチが広がって単位長さ当たりの接点数が減少し、シールド性能が低下する場合があります。O-Ringタイプは指定寸法で精密製造されるため、作業者の技能に左右されず、グルーブ全周で均一なピッチと安定したシールド性能を維持します。
- 連続導電ループ(Closed-loop)による高周波漏洩の抑制
EMIシールド構造で最も脆弱なのは、切断したガスケット端部の突合せ部に生じる微小なシームです。高周波帯ではこの微小ギャップが放射アンテナとして作用し、シールド性能を著しく低下させます。O-Ringタイプは切れ目のない連続導電ループとして構成され、ギャップ起因のRF漏洩を物理的・電磁的に抑制します。
- グルーブレス取付けが可能
一般的な線状ガスケットにはグルーブが必要ですが、O-Ringタイプは内向きの締付け応力(Hoop Stress)と自己弾性を有します。そのため、グルーブ加工が困難な平滑なシャフト外径にも脱落せず密着取付けでき、機構設計の自由度を高めます。
お問い合わせ: ask@esongemc.com / +82-2-2082-5420